【トヨタ ハリアー(EREGANCE)】レビュー

レクサスと切り離された新世代ハリアー

  • 直列4気筒
  • 2,000cc
  • 151馬力/トルク19.7

本家RXが世界基準で進化していくなか、とうとうバッジの付け替えだけでは対応できなくなってきたことによるまさかの復活を果たしたハリアー!トヨタには事実上CH-Rとランドクルーザープラドの中間を埋めるSUVが不在だったので名前だけでもハリアーを名乗ろうとした北米RAV-4ベースの車であります。

つまり往年のラグジュアリーSUVではなく「ラグジュアリーっぽく見えるRAV-4」になってしまったんですけど(ようするにプラットフォーム的には下位モデルと共通になった)、ハンドルを握るとそこには納得のトヨタワールドが広がっていました。

エクステリア

なんか前後のオーバーハングがビヨ~ンと間延びしていますよね。これはプラットフォームがホイールベースの短いRAV-4になったからです。高級感はボディーパネルの曲面を利用して何とか高めているのですが、先代にあった素の質感は感じとることができません。

ハリアーの鷲のマークは先代よりもスタイリッシュになりました。クラウンもそうなんだけどモデルチェンジの度にエンブレムがソリッドになっていきます。リアエンドの絞りこみはなかなか良いですね。数あるSUV群のなかでもこの部分は非常に洗練されています。

都市型SUVを謳っている割にはなぜだか地方で根強い人気を獲得。そもそも都心部では車体の大きなSUVが好まれていないと考えることができますが、実際にはメルセデスのGLCやポルシェカイエンあたりがゴロゴロ走っていることを考えると単純に商品力のせいなんでしょうかね。

インテリア

最新モデルなのにどことなくアルテッツァやヴェロッサのようなテイストが見え隠れするオリエンタルな雰囲気です。バブル期のラウンジをイメージしたような感じかな。確かにパッと見はラグジュアリーに感じるかもしれませんが、よく見ると材質が微妙にチープです。

爪で引っ掻くとあっという間に傷がついてしまうソフトパッドや、ホールド性には何の効果も発揮しないシートのイボイボに昭和の風を感じます。個人的に引っ掻き傷がかなり気になるタイプですので、先代型ハリアーを知る身としては少々受け入れにくいかな。

時代が昭和であれば特に機能性もなく見た目が豪華であれば十分に高級を謳うことができた。だけど今はそんな暑苦しい高級がまかり通る時代ではないよね。逆に一世代前の先代ハリアーにはシンプルでありながらも上質さを感じさせる凛とした雰囲気がそこにはありました(そもそもレクサス品質ですからね)。

つまり今回のハリアーは全体的に「軽い」んですよ。造りもそうですけど「より手軽に」感が全面的に押し出され過ぎている感じがします。「高級ではなく見た目が豪華に見える」が正しい表現です。偽物のルイヴィトンだって見た目は豪華なのと一緒です。

だけどこの軽さには一番分かりやすいメリットがあります。それは価格です。現行型ハリアーが伝統であったV6エンジンを捨てて直列4気筒を採用したのも単純に価格が引き下げられるからです。ハリアーの売れているグレードがほぼ2,000cc帯であることを考えるとマーケティング的には成功ということになります。

メーターはトヨタ風(なんとなく造形で分かる)のオーソドックスなものです。発色が良いのでそこそこ見やすいのは好印象。

走行インプレッション

アクセルを踏んだ瞬間に感じるカラカラとした軽い音…。先代ハリアーのような重々しい重厚感など皆無なカジュアルなテイストです。つまりこの車はかつての高級車としてではなく、より多くの人に「これで十分か♪」と思わせるようなカジュアルSUVへの路線変更を意味していると思います。

このテイストはさすがにヴィッツとまではいきませんが、間違いなくプリウスやカムリあたりのそれに近いものがあります。先代と比べると大幅に排気量がダウンした2,000ccエンジンですが、急加速を必要としない限り日常域では非常に扱いやすいトルク特性です。

ハンドルはこのクラスのSUVにしては軽いですね。まぁ誰でも運転できるトヨタの流儀的な部分もありますから、下手に重くするよりも万人受けしやすいセッティングにしたのでしょう。アクセル、ブレーキの質感は価格相当ですが、特に違和感なく作動してくれるので好印象です。

ハリアーという車

そもそも自動車業界に「ラグジュアリーSUV」の概念を世界で初めて登場させたのが1998年のレクサスRX(初代ハリアー)でした。本格的なオフロード性能は持たずとも、都会で映えることを優先した新しいコンセプトはアメリカで多くの支持層を獲得したのです。

これに追随する形でメルセデスGLクラス、BMW X5、ポルシェカイエンなど世界中の各メーカーからクロスオーバーSUVが誕生しました。つまりハリアーは誕生当時からエポックメイカーとしての地位を確立しており、従来では存在しなかった新しいジャンルの開拓者(車)として新たな可能性を切り開いたのです。

レクサスRXとの分岐もハリアーらしさを保つために必須だった事項であり、高級車としてはRXが、カジュアル車としてはハリアーが受け持つことで各車の個性を守ろうとしたのかもしれません。今のRXは確かに高級ですが、かつての個性があるかと問われればそうでもありません。

NXやUXだって同じレクサス内の高級SUVですからね。その点ハリアーは日本専売車としてある程度の自由を得ることが出来たのではないでしょうか。ホイールベースの短さも高級車では(直進安定性の問題で)良しとされませんが、日常使いでは取り回しが楽なので狭い道でも気を遣うことはありません。

運転していても楽しさは感じませんが、逆に疲れもしない(カムリと同じように良くも悪くもトヨタ風の味付け)ので旅行などのシチュエーションでも難なく活躍できると思います。とりあえずトヨタなので安心ですしね。長距離ユースを想定するならハイブリッドモデルを選択した方が良いかもしれません。